展示

序章 JUNJI ITO

伊藤の独創的な作品は海外での評価も高い。30以上の国と地域で翻訳され、世界で最も権威のある漫画賞のひとつである米国アイズナー賞を、通算4度も受賞。フランスで毎年開かれる欧州最大規模の漫画の祭典「アングレーム国際漫画祭」で昨年、特別栄誉賞を受けた。
そんな伊藤氏の海外での出版物や受賞の数々を概観。本展のメインビジュアル《富江・チークラブ》の原画も展示する。

《富江・チークラブ》(2023年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版

第1章 美醜

伊藤の描く美男美女は、この世の者とは思えない妖艶さをまとう。時に、花から花へ飛ぶ蝶のように移り気で、悪びれることなく周囲の人間を狂わせ、内面の醜さが表に吹き出した途端に自身も恐ろしい異形へと姿を変える。
その後の伊藤作品の大きな特徴のひとつとなった美しさと醜さが同居した世界観や、コミカルな描写も交えつつ展開する物語の数々を展示する。

《富江》(2000年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版
《富江・トップモデル》(2000年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版
《死びとの恋わずらい》(1997年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版

第2章 日常に潜む世界

奇想天外な展開と流れるような筆致で紡がれる、唯一無二の世界――。
そのホラーの入り口は常に、ごくありふれた日常の中に静かに存在している。徹底的に追求されたリアリティーと自身の経験に裏打ちされた描写は、見る者の共感や想像力をかき立てて、物語を身近に感じさせる力がある。ねじれたり膨れあがったりした皮膚やなめくじのぬめぬめとした質感は、誰しもが自らの記憶と結びつけずにはいられない。

本展のための描き下ろし《禍々しき桐絵》(2023年) ©伊藤潤二/小学館
《うずまき》(1998年) 🄫伊藤潤二/小学館
《溶解教室》(2013年) 🄫伊藤潤二(秋田書店)2014
《うずまき》(2010年) 🄫伊藤潤二/小学館

第3章 怪画

物語を象徴する扉絵は、異世界への入り口だ。物語のテーマを盛り込みながら描かれた1枚の絵は、読者の期待をあおり感情の高ぶりを予感させる。
また突如として一面に現れる驚愕の見開きなど、絵画作品のような完成度をほこるコマも伊藤の魅力のひとつ。細部まで精密に描かれた伊藤のこだわりは、原画だからこそ見てとれる。

《血玉樹》(1993年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版
《放射状輪廻》(2019年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版

第4章 伊藤潤二

歯科技工士から漫画家へと転身した伊藤の作品には今もなお、創作の根底に原体験ともいえる「奇妙だけどリアル」な世界観が息づいている。
幼少期から現代までの伊藤の生活から、その素顔に迫る。

本展のための描き下ろし《富江の世界》(2023年) 🄫ジェイアイ/朝日新聞出版
《伊藤潤二の猫日記 よん&むー》(2009年) 🄫伊藤潤二/講談社